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認知症の診断方法!ここまでなら家族がチェックできる

2015年3月18日

もの忘れが増えると、認知症のことが気になってきます。もし、今のもの忘れが認知症によるものであれば、できるだけ早く治療を開始したいところです。他の病気でもそうですが、特に認知症では、早期発見・早期治療開始が重要です。

アルツハイマー型認知症などは、現時点では根治できないものですが、早期発見・早期治療開始で、進行を遅らせることはできます。また、初期であれば根治可能なものもあります。初期であれば、というのがポイントです。放置してしまえば手遅れになります。

アルツハイマー病、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症で認知症の90%を占め、これらには根本的な治療方法がありませんが、以下のように根本的な治療が可能な認知障害もあります。

病名治療方法
慢性硬膜下血腫外科手術:血腫除去
正常圧水頭症外科手術:髄液シャント
脳腫瘍外科手術:腫瘍除去
甲状腺機能低下症甲状腺ホルモン剤

とはいえ、受診には費用がかかりますし、物忘れ外来などは予約待ちが多く、気軽に受診できるとはいえません。また、認知症の専門医の数は不足しているというのが現状で、気になった人がすべて受診してしまえば、パンクしてしまいます。

認知症の診断は専門医など有識者が行うものですが、簡単なスクリーニングならば家族でもできるます。ここでは、そういった方法を紹介します。

家族の認知症を早期発見

高齢の父親のもの忘れが最近増えたような気がする。優しかった祖母が少し怒りっぽくなったように感じる。そんなとき、認知症が心配になります。

繰り返しになりますが、現在では、早期発見と早期治療開始ができれば、進行を遅らせることも可能になっていますし、中には根本的な治療が可能なケースもありますから、放っておくのは得策ではありません。

ここでおすすめするスクリーニング方法を試してみて、もし認知症や軽度認知障害(MCI)の疑いがあれば、すぐに物忘れ外来などを予約し、専門医に診てもらってください。

【軽度認知障害】
認知症とは、認知機能が低下して、生活に支障が出ている状態を指します。

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、認知機能が低下しているが、生活に支障が無い状態です。正常と認知症の境界線ともいえる状態です。

因みに、軽度認知障害は、次のように定義されています。

  1. 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
  2. 日常生活動作は正常
  3. 全般的認知機能は正常
  4. 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
  5. 認知症ではない

軽度認知障害(MCI)を放置すると、その半数程度は、5年以内に認知症を発症すると言われています。

おすすめのスクリーニング方法

まずは、一番のおすすめのスクリーニング方法です。医療や介護の現場でも用いられているテスト2つを組み合わせたものです。

  • 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
  • 時計描画テスト(CDT)

臨床心理士や医師などがこれらを使う場合には、認知症の知識や経験を背景に行います。認知症の知識の無い家族が行う場合、それと同等のレベルでのスクリーニングというわけにはいきませんが、それでも十分に意味のあるやり方です。

この方法を行うときに、1つ注意したいことがあります。それは、本人の自尊心を傷つけないことです。認知症のテストなどというと、怒り出す人もいますし、ひそかに傷つく人もいます。

家族なので心配の必要も無いかもしれませんが、それでも改めて注意をしてください。細心の注意が必要です。身構えてチェックするのではなく、日常のコミュニケーションの中で、遊び感覚で行えれば理想的です。

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、質問式の認知症判定テストです。テスト①からテスト⑨までの9つのテストで構成されています。

長谷川式スケールは、医療や介護の現場で広く用いられる認知症のスクリーニングツールです。同様のツールにMMSEがありますが、特に介護現場では長谷川式スケールが多く用いられます。

長谷川式スケールのシート(A4サイズ縦)を、作成しました。よろしければ、ご利用ください。
HDS-R-A4(pdf)
HDS-R-A4(Excel)

準備

テストに入る前に次の準備が必要です。

  • 筆記用具
  • 5つの品物
  • 年齢の確認
  • 本人の承諾
【筆記用具】
筆記用具としては、紙とペンだけです。HDS-R-A4シートを利用する場合は、ペンだけでOKです。

【5つの品物】
相互に関連性の無い5つの品物を用意します。例えば、『時計 ペン スプーン 鍵 十円玉』です。スプーンとフォークや、鉛筆と消しゴムなどは、相互に関連性が有り、まとめて記憶できてしまうので、一緒に選択することはNGです。

【年齢の確認】
予め年齢を確認しておきます。言うまでもありませんが、本人に聞いてはいけません。家族であれば調べるまでもないかもしれませんが、不確かであれば、書類などから生年月日を確認し、計算しておきます。

【本人の承諾】
形式ばった承諾が必要というわけではありませんが、本人が不承不承、という状態でないことが必要です。無理やりテストすれば、テスト結果はまったく信頼できないものになります。

さて、準備が出来ましたら9つのテストの開始です。HDS-R-A4シートを利用する場合は、水色の正解欄などを記入してから始めてください。

テスト①(1点) 比較的新しい記憶

【問】 お歳はいくつですか?

【判定】 ±2歳までは正答

【得点】 正答:1点

問い方は、たとえば、「おじいちゃん、いくつになったんだっけ?」などのように、普段の会話に近い言い方にしてもOKです。むしろ、その方が良いかもしれません。これは以下のテストについても同様です。

注意したいのは、生年月日が言えたからといって、正解としないことです。生年月日は古い記憶で、年齢は新しい記憶なので、記憶のされ方が異なります。

※ 医師によっては、±1歳、±2歳を0.5点として重み付けする場合もありますが、正式には1点です。

テスト②(4点) 新しい記憶

【問】 今年は何年ですか?

【判定】 西暦でも年号でも、年の一致で正答

【得点】 正答:1点

【問】 今日は何月何日ですか?

【判定】 月、日それぞれで、一致すれば正答

【得点】 月日とも正答:2点  月のみ正答:1点  日のみ正答:1点

【問】 今日は何曜日ですか?

【判定】 一致で正答

【得点】 正答:1点

テスト2の上記3つの設問は、1つの設問として、「今日は何年何月何日の何曜日ですか?」と問うてもOKです。配点は、年、月、日、曜日の各々で1点です。ただし、答えられなかった場合は、分けて質問しなおしてください。

テスト③(2点) 場所の見当識

【問】 私たちが今いるところはどこですか?

【判定】 今いる場所が答えられれば正答

【得点】 ヒント無しの自発的正答:2点 ヒント後の正答:1点

判定は、家、病院、施設など、今いる場所が答えられれば正答です。病院の名称や地名、住所、誰々の家などの回答でも、本質的な理解がある場合には正答とします。

問いの後、5秒ほど答えのない場合には、「家ですか?病院ですか?施設ですか?」や、「自宅ですか?公民館ですか?誰々の家ですか?」のように選択肢をヒントとして示します。

【5秒間の数え方】
5秒の時間は、ストップウォッチなどで測ってもよいのですが、頭の中でカウントしてもOKです。

1-2-3-4-5(いち、にー、さん、しー、ご)と数えるよりも、001-002-003-004-005(ぜろぜろいち、ぜろぜろに、ぜろぜろさん、…)のようにカウントすると、比較的正確に秒をカウントできます。

テスト④(3点) 3つの言葉の記銘

【問】 これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますので、よく覚えておいてください。 「桜」 「猫」 「電車」

【判定】 単語ごとに、言えれば正答

【得点】 初回の問いでの正答数が得点

「桜」「猫」「電車」は、ゆっくり区切って発音し、3つ言い終わった後に復唱してもらいます。

もしどれかが答えられなかった場合には、あと2回(計3回)まで繰り返し、できるだけ「桜」「猫」「電車」を覚えてもらいます。

得点は、初回の問いでの回答で採点します。2回目以降で正解しても得点には加えません。答えられなかったときに、あと2回まで繰り返して覚えてもらうのは、以降のテスト⑦の準備のためです。

尚、「桜」「猫」「電車」の3つの言葉は、他の言葉に置き換えることはできません。必ず、「桜」「猫」「電車」で行ってください。

テスト⑤(2点) 計算問題

【問】 100引く7はいくつですか?

【判定】 93で正答

【得点】 正答で1点

### 100引く7が不正解のときには、次の問を0点としてスキップします。 ###
【問】 そこからさらに7を引くといくつですか?

【判定】 86で正答

【得点】 正答で1点

「そこからさらに」と問うことが大切です。「93から」と問うのはNGです。前問の回答を覚えていることも、チェックするためです。

テスト⑥(2点) 数字の逆唱

【問】 これから言う数字を逆から言ってください。 「6」 「8」 「2」

【判定】 286と逆唱できれば正答

【得点】 正答で1点

「6」「8」「2」は、1秒くらいの間隔でゆっくりと問います。

### 286と正答できなかった場合は、次の問を0点としてスキップします。 ###

【問】 「3」 「5」 「2」 「9」

【判定】 9253と逆唱できれば正答

【得点】 正答で1点

「3」「5」「2」「9」は、1秒くらいの間隔でゆっくりと問います。

テスト⑦(6点) 3つの言葉の遅延再生

【問】 先ほど覚えた言葉をもう一度言ってください。

【判定】 「桜」「猫」「電車」の単語ごとに、言えれば正答

【得点】 単語ごとに、正答で2点(全正答で6点)

### 3つとも正答した場合は、次のヒントはスキップします。 ###
【ヒント】 ひとつは植物でした。 ひとつは動物でした。 ひとつは乗り物でした。

【判定】 「桜」「猫」「電車」の単語ごとに、言えれば正答

【得点】 正答で1点

自発的に正答できなかったものに対するヒントだけを、ひとつずつ提示します。「植物と動物がありました」と一度に提示するのはNGです。

テスト⑧(5点) 5つの物の記銘

【説明】 これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。

【品物の提示】 <ひとつずつ、「これは鍵ですね」といったように名前を言いながら、目の前に置きます。>

【問】 これからこれを隠しますから,何があったか言ってください。順番はどうでもいいですから思い出した物から言ってみてください。<問いの後、品物を隠します。>

【判定】 品物ごとに、言えれば正答

【得点】 品物ごとに、正答で1点(全正答で5点)

回答の待ち時間は、決まっているわけではありませんが、思い出せそうであれば、できるだけゆったりと待つようにします。

テスト⑨(5点) 言葉の流暢性

【問】 知っている野菜の名前をできるだけたくさん言ってください。

【判定】 野菜がでてくれば、言えた個数としてカウント(重複しても構わないがカウントは1つとする)

【得点】 10個以上:5点 9個:4点 8個:3点 7個:2点 6個:1点 5個以下:0点

10秒間回答がなければ、そこで終了とします。

長谷川式スケールの判定

長谷川式スケール(HDS-R)は30点満点です。

20点以下ならば認知症の疑いありと判定します。できるだけ早い、もの忘れ外来や認知症外来などの受診をおすすめします。

21点から24点の場合にも、認知症を疑うような言動が見受けられるのであれば、受診をおすすめします。軽度認知障害の疑いもあります。

25点以上であれば、ひとまず安心です。でも、これで認知症や軽度認知障害の疑いが、完全に無くなるわけではありません。

アルツハイマー型認知症の可能性はずいぶん低くなったのですが、例えば、レビー小体型認知症などの疑いは残ります。初期のレビー小体型認知症では、長谷川式スケールで高得点となることも、決して稀ではありません。

万引きなど社会的問題行動で、最も介護が大変だと言われる前頭側頭型認知症の一部でも、長谷川スケールや同様のスクリーニングテストであるMMSEでは高得点となります。

【長谷川式スケールの平均点】
長谷川式スケールの平均点と大体の範囲は、次の表が目安になります。

対象平均点範囲
健常24点20~30点
軽度認知症19点14~24点
中等度認知症15点11~19点
※ 長谷川式スケールは、専門家が使ったとしても、得点による重症度分類を行うことができません。

次の時計描画テスト(CDT)では、アルツハイマー型認知症以外の認知症についても検出する可能性があります。是非行ってみてください。

簡易的な時計描画テスト(CDT)

時計描画テスト(CDT)は、10時10分を指す丸いアナログ時計を描くテストです。医療現場で診断を目的にした、実際の時計描画テスト(CDT)を行うためには、かなり勉強しないとできませんし、十分な経験も必要です。

でも、ここでは、認知症型の鑑別や重症度の分類を目的としていません。専門医の受診をするべきかどうかスクリーニングするのが目的です。

ですので、ここでは、時計描画テスト(CDT)の簡易的なやり方を紹介します。簡易的な時計描画テスト(CDT)をやってみて、問題がありそうだったら、専門医に任せる、というスタンスです。

簡易的な時計描画テストの準備

B5サイズかA4サイズくらいの白い用紙を準備します。用紙の中央に、直径8cm程度の円を描いておきます。

B5サイズのシートを作成しておきましたので、よろしければ、印刷してお使いください。
CDT-B5-2(pdf)
CDT-B5-2(Word)

簡易的な時計描画テストの実施

準備した用紙に、10時10分を指すアナログ時計(数字と針)を描いてもらいます。

「1から12の数字と10時10分の針を描いてください」と、数字のヒントなどを加えて指示するのはNGです。「10時10分の時計の数字と針を描いてください」などのように指示します。

カンニングされないよう、見えるところにアナログ時計を置かないようにします。因みに、カンニングしようとする人はおおかた認知症、とも言われています。おおかた、というのは言い過ぎな気もしますが。

描画時間に制限はありませんが、描ききったと思えるところか、もうこれ以上描けそうもないと思えるところで終了とします。

簡易的な時計描画テストの判定

実際の時計描画テストには、様々な採点システムが存在していて、判定方法も複雑です。でも、ここでは、単純に、感覚的に判定してください。ちゃんと描けているかどうかだけをチェックします。

1から12の数字が、だいたい円周の内側近辺に、ほぼ等間隔に正常に並んでいて、違和感もなく、だいたい10時10分を指す針が中央から放射線状に描かれていればOKです。

もし、ちゃんと描けなかった場合には、認知症もしくは軽度認知障害の疑いがあります。できるだけ早い、もの忘れ外来や認知症外来などの受診をおすすめします。

【実際の時計描画テスト(CDT:clock drawing test)】
医療現場で、時計描画テスト(CDT)が用いられる場合は、やり方も判定方法も、もっと厳格です。認知症の型の鑑別にも用いられます。

通常3段階に分けて行なわれ、
まずは、1.白紙に円と数字と針を描いてもらい、
次に、2.円の印刷された用紙に数字と針を描いてもらい、
最後に、3.円と数字の印刷された用紙に針を描いてもらいます。

参考までに、2.と3.用のB5サイズの用紙を作成しました。1.で用いるのは白紙です。
CDT-B5-2(pdf)
CDT-B5-2(Word)
CDT-B5-3(pdf)
CDT-B5-3(Word)

時計描画テスト(CDT)では、多くの採点システムが考案されています。実施方法についても多様です。

もっと簡便な方法

おすすめの方法(長谷川式スケール+時計描画テスト)ができれば一番良いのですが、試されることへの不快感から、拒絶される場合があります。中には、疑われていると感じ落ち込んでしまう人もいますし、逆に怒り出す人もいます。

おすすめの方法ができない場合には、次の3つの問いで簡易的なテストを行います。

  1. 「いくつになったんだっけ?」
  2. 「今日、何月何日だっけ?」
  3. 「朝、何食べたっけ?」

いずれの問いも、日常生活でありがちな問いですし、「私が忘れたので教えて下さい」というニュアンスがあるので、不愉快にさせることもありません。

デメリットとしては、おすすめの方法よりも精度が低いことです。ですが、認知症の過半数を占めるアルツハイマー型認知症や、その境界線の軽度認知障害であれば、比較的発見されやすいといえます。

「いくつになったんだっけ?」

比較的新しい記憶である、自身の年齢を、覚えているかどうかのテストです。

特に、アルツハイマー型認知症では、記銘力(覚え込む力)の低下が初めにあらわれる症状です。保持力(記憶を保持する力)と想起力(思い出す力)が正常であれば、古い記憶は正常のまま、新しい記憶が不良となります。

記銘力が低下する前に記銘された古い記憶は、記銘力が低下した後も、そのまま残ります。例えば、年齢(新しい記憶)は忘れても、生年月日(古い記憶)は覚えているといった状態です。

「今日、何月何日だっけ?」

年齢よりも新しい記憶である、月日を覚えているかどうかのテストです。

この問いには、記銘力が正常であっても、答えられないこともあります。たとえば、仕事を退職してのんびりと暮らしていて、今日が何日なのか全く気にしていない場合です。その際には、『朝に日付を確認した後、午後に改めてたずねる』といった工夫をしてください。

「朝、何食べたっけ?」

部分的なもの忘れか、まるごとのもの忘れか、を見分けるテストです。このテストでは、何を食べたか正しい答えが無くても問題ありません。朝食べたのに食べていないという意味の言動があった時に問題とします。

正常な場合でも、何を食べたか覚えていないことは、よくあります。そんな部分的なもの忘れは、老年期では当たり前です。アルツハイマー型認知症では、食べた事自体を、まるごと忘れてしまいます。

「朝、何食べたっけ?」という問いは、たとえば、「おやつに何食べたっけ?」などでもOKです。

3つの問いのどれかひとつでもNGであれば、できるだけ早い、もの忘れ外来や認知症外来などの受診をおすすめします。